沖縄移住、3か月


この記事は7月アドベントカレンダーの記事として作成されております。

クソボケ

12月25日まで予備日として設けているのでいつでも参加可能です。連絡待ってます。

それでははじめます。

人が集まればなにができる?

人が集まれは街ができる。

街ができればそこになにがある?

そこには営みができる。

営みは、経済活動と言い換えても良い。

人が、おのれの生活を成り立たせるために、働き、金銭を得て、同じ街の見知らぬ誰かの成果物を買い、空腹を満たし、部屋を満たし、街で遊ぶ。

つまるところ、金銭でなんらかの快を手に入れるやりとりが発生する。

さて、経済活動には健全なものだけではなく、人目を忍ぶものある。

それは、人間が健全な趣味嗜好だけで成り立つ存在ではないからだ。

だから、この国では、ある程度の人が集まる街に(肌感覚として、だいたい30万人を基準にしてよいのではないだろうか?)「らしんばん」やら「メロンブックス」やら「ソフマップ」やら「駿河屋」という名前のお店が存在する。

そしてそこには、必ずRewrite+や大図書館の羊飼いといったタイトルの、後ろ暗い趣味を持つ人間が愛好するゲームの中古品が存在している。

上記のことを踏まえれば、こんなことを言ってしまっていいだろう。

この国に大図書館の羊飼いの中古品が存在しない30万人都市は、存在しない。

自分がエロゲを覚えたのは、大阪で東洋哲学を専攻し、派手に将来を棒に振っていた時期だった。

大阪には、日本橋という後ろ暗い趣味を持つ人間の聖地があって、そこのソフマップという店は、中古エロゲでフロアをひとつ丸々埋めるという、なかなかに気合の入ったことをしていた。

自分は、社会人になっても、そこでロマンスを買い漁る病的な人間として存在していた。

本題に入る。

「日本萌学会くん、君は来月から沖縄に転勤だ」

日常の終わりは突然だった。

「沖縄、ですか?」

「ああ、沖縄の那覇だ」

病人は、サラリーマンという街でもっともありふれた人間の形態に、魂まで染めていた。

サラリーマンという生き物は、上司からの神託に逆らえない。そういう生態を持つ。

だから、自分は「来月から沖縄」というありがたいお言葉を半ば消化不良のまま半狂乱で荷造りをして、6年住んだ街を離れ、ソラシドエアで南の島へ飛んだ。

日本の南西部に位置する沖縄県は、363もの島々から長大な列島を形成しており、その本島までは飛行機で最低でも2時間はかかる。その気候は亜熱帯に属し、そこに住む人々の風土も、本土のそれとは異なる独自のものを垣間見せることがある。

さて、自分が初めて那覇空港に降り立ってからRe:ステージのライブパーカーを脱ぐまで30分はかからなかった。蒸し暑い島だと思った。自分が今まで過ごしていた季節から、連続性が剥ぎ取られた感覚があった。

見知らぬ街を歩く。普通、その行為には楽しみがある。

見知らぬ街を歩く。たとえその土地が未知であっても、風景の中に、例えば、片側二車線の国道沿いに並ぶチェーン店の牛丼屋やテナントの携帯ショップ、低い街路樹と自転車を漕ぐ中学生の集団といった光景に、自分が過去に見たものたちとの共通項を見出すことがある。視覚的なエコー。共鳴の感覚がある。

さて、それを踏まえた上で、沖縄の道沿いを散歩してみる。驚いたことに共鳴があまりないのだ。3月とは思えない日差しの下、汗を流して天使様ウェファーチョコを探し、何件も何件もセブンイレブンを巡る。なにも見つからない。肌に触れる気温が違った。湿度が違った。だから汗だけを無駄にかいた。そして、一息ついて不動産屋に向かう中、自分の目に飛び込んできたものは一本の街路樹だった。

チューブのような根が、這いつくばるように力強く地面を掴み、ぐるぐると泥臭い螺旋がひとつの幹を形成していて、見上げると、空と平行にひろくひろく葉を伸ばしていた。

生まれて初めて見る種類の街路樹だった。

その木の名はガジュマルと言った。

このときの感覚は、途方もないとしか形容できない。

沖縄に移住して3ヶ月。

まだ、ぐらりと揺れた感覚が抜けきっていない。

亜熱帯地方に属する沖縄は、周囲を海に囲まれ、四季は漠然としており、常に湿度は90%近くを記録する。

そんな島では、当然常に半袖で、ネクタイと肩肘張ったスーツが嫌いな自分は高温多湿を嫌う気分と同程度に、緩い服装が釈される生活を気に入った。

本土であれほど見かけたコカ・コーラの自販機は見当たらず、ダイドーやチェリオの自販機ばかり。

それでも、どの店に入ってもマウンテンデューやルートビア、そして最高なことにドクターペッパーが格安で手に入った。

人はしなやかな生き物だ。自分も例に漏れず、この島に折り合いをつけ、どこか気楽に生きていくことを覚え始めた。

そしてしなやかに欲望の枝葉を伸ばし始めた。

「給料が入ったからそろそろエロゲ買うか」

人が集まれば、街ができる。

街ができれば、営みができる。

営みがあれば、(理屈を何段か飛ばして)ソフマップが、最低でもらしんばんができる。

これが自分の信じるこの国の常識だった。

だから、エロゲを買いに行こう。

常識に照らし合わせれば、掘り出し物が見つかるはずなのだから。

“2017年12月現在、沖縄県下でまともにエロゲを扱っている店は少ないです。たいへん残念なことに、15年以上にわたって沖縄のエロゲ新作供給を支えてきたグッドウィル那覇新都心店が、2017年4月にエロゲの取り扱いをやめてしましました。全国のグッドウィル店舗が2017年2月~4月にエロゲ販売を中止したためですが、沖縄は通販で別途送料を要求されることもあるので、エロゲショップの実店舗はそれなりに貴重であり、この決定は寂しいものがあります。そのようなわけで、沖縄でエロゲを売っているのは実質マンガ倉庫各店だけになりました。”

https://gameimidascube.com/chihou/okinawa.html

上記のサイトを見れば、現在沖縄でエロゲを扱っているのは漫画倉庫系列の店舗と言うことになる。ところが、一度マンガ倉庫那覇店を訪ねたのだが、R18コーナーが何も存在しなかったのだ。

となれば、最後の希望はマンガ倉庫浦添店となる。

那覇市からマンガ倉庫浦添店に行くには、国道58号線を北上し、広大な海兵隊基地、キャンプ・キンザーを左手に見ながら、自転車で20分近く坂道を登り続けなければならない。ある日の夕方、仕事終わりの身体をむち打ち、マンガ倉庫に転がり込んだ。

身体的疲労と、たかがエロゲのために奔らされるというある種の情けなさ、待ち望んだものへの邂逅を心待ちにする期待と、それらがすべて水泡に帰すのではないかという澱み。すべてを抱え込んで店の奥になだれ込む。

暖簾が見える。スタッフルームではない。客が入れるタイプの暖簾。その先には、18禁コーナーがある。

渇望していた。だから、迷いなく入った。この瞬間、脳内に乱舞していたのはソフマップ難波店で享受していた栄光だった。

フロア一つが中古エロゲで埋まっていた世界。

こういうものが、街のどこかになければならないと思い込んでいた。

結果から話すと、AVとエロマンガしかなかった。

エロゲは棚一つ分、それも歯抜けして中古が置かれていて、新品はあおかなが2つばかり、ポンと置かれている程度だった。

振り向いた。

「マンガ倉庫浦添店のR18コーナーは5月から閉鎖します」

この1枚の紙が、忘れられない。

この島にエロゲがない。

米軍基地の脇の真っ直ぐな夜道を、へこへことペダルを漕いで走っていた。

カゴの中に入っているものは、捨て値で売られていたアストラエアの白き永遠と、スマガだけ。

これが沖縄で買った最初のエロゲ。そして、最後のエロゲになるのかもしれない。

途方もない。途方もないとしか形容しがたい愕然とした気分に襲われていた。

そうして、気がつけば家に帰り、今日まで積みゲーのストックを崩しながら生活している。

現状、ただ一つ言えることがあるとすれば。

那覇・浦添で飲めるエロゲオタクを募集している。

【追記】

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

https://www.suruga-ya.jp/feature/naha_open/index.html

明日の記事ははやかわさんです。


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